「二酸化炭素削減技術実証試験委託費」に係る坑井作業時のブローアウト対策 検討
事業報告Business Report
「二酸化炭素削減技術実証試験委託費」に係る坑井作業時のブローアウト対策 検討
1.概要
2010年4月20日にメキシコ湾で発生した原油流出事故の事例を持ち出すまでもなく、坑井作業における最大級のハザードはブローアウトです。CO2を取り扱う坑井では、 貯留層流体が原油や天然ガスではないこと、また坑内のCO2は多くの場合、超臨界状態であることより、現場で実際に遭遇する事象も大きく異なることに留意しなければなりません。
本調査では、日本におけるCCS大規模実証試験において、CCS圧入井作業中のCO2ブローアウト事故やモニタリング期間中のCO2漏洩事故を防止するために、過去の事例や坑井の仕上げ方法等について調査を行い、ブローアウト対策を検討しました。
2.調査内容
(1)CO2ブローアウト
CO2ブローアウトに関してその理論、事例、対策等の面から情報を収集し整理しました。CCS坑井で坑内圧力コントロールに失敗すれば、CO2は急激に膨張して気体に変化 する。その結果泥水等の坑内流体は駆逐され、同時に断熱膨張によりドライアイス片が生成します。これらの防止策は以下のようにまとめることが出来ます。
- 通常のウェルコントロールと同様に、「速やかに坑井を密閉すること」が何よりも重要です。CCS坑井では坑内からの急激なフローも想定されるので、BOPの準備(アニュラーBOPや適切なサイズのラムBOP)、またパイプ内からのフロー防止(バックバルブ等の使用)に留意しなければなりません。
- CCS坑井では、密閉時にアンダーグランドブローアウトが誘発され、通常の ウェルコントロール手法では対応できないこともあります。そのような場合には、 「ダイナミックキル法」を適用することが有効な場合があります。
- キックが発生した場合には、密閉圧力が高くなることも想定されるので、そのような事態にも対応できる耐圧を持った機器や資機材を準備しておくことが望まれます。
- 坑口装置が凍結した場合は加熱装置が必要となるが、予め準備することはほとんどありません。
(2)CCS坑井の仕上げ法
米国のCCSプロジェクトで掘削されている圧入井の仕上げ事例、また坑井仕上げ サービス会社が推奨する手法を調査しました。
超臨界状態のCO2には溶解作用があるので、パッカーやシール類を劣化させます。
加えて、CO2は水と共存すれば溶解して炭酸となり、金属やセメントに腐食をもたらします。これらの防止策は以下のようにまとめることが出来ます。
- 超臨界状態のCO2が持つ溶解作用や腐食作用に対応できる材質を選定します。 特に、溶解作用によるエラストマー材の膨潤には留意しなければなりません。
- 金属材はCRA(耐腐食性金属:クロム合金等)、またセメントは耐酸性セメントが広く使用されています。但し、これらの材料は高価なので、コーティング、繊維ライナー、スリーブ等の挿入で代用することもあります。
- CO2と水が接触しなければ腐食は生じないし、セメント中にチャンネリングがなければ腐食は進行しません。そこで、材料選定以上に基本作業に忠実であることが重要です。